東京大学政策評価研究教育センター

CREPEFR-4 資産バブル、内生的成長、金融市場の摩擦


著者:平野智裕(東京大学)・柳川範之(東京大学)

画像提供:Rawpixel / PIXTA(ピクスタ)

Executive Summary

Background(問題意識)
本論文では、バブルと金融の関係を分析する理論的枠組みを提示する。ここでは特に、 (1) バブルの発生は金融システムの質とどのような関係にあるのか、(2) バブルは実体経済にどのような影響を与え、その影響は金融システムの質とどのような関係にあるのか、(3) バブル崩壊後の経済成長経路は金融システムの質とどのような関係があるのか、という問いに対する議論を紹介する。これらの問いを解く鍵となるのは、金融システムの発展度合い、つまり、金融システムの質である。

Methods (分析方法)
本論文では、金融市場の不完全性を考慮した内生的成長モデルという理論を用いて、バブルと金融システムの質との関係を描写する。その際、金融システムの質を分析の枠組みに落とし込むために、どの程度将来収益を担保に融資できるのかを表す「収益担保の程度(pledgeability)」という、既存研究で確立された指標を用いている。収益担保の程度が高ければ(低ければ)、金融の発展度合いが高く(低く)、金融システムの質が高い(低い)。本論文の特徴は、現代のマクロ経済学における標準的な理論枠組みのもとで、バブル発生のメカニズム、バブルが経済に与える影響、バブルが経済厚生に与える影響を分析した点である。

Findings(主な結果)
バブルは、金融がかなり未発達な経済でも、十分に発達した経済でも生じず、中程度に発達した状況下で生じやすい。この結果は、金融システムが未発達な経済において金融改革や金融自由化を通じて金融の効率性を高める政策が、資産バブルを生み出す可能性があることを示唆する。またバブルは、金融が比較的未発達な経済では、長期的な経済成長率を高めるが、金融が比較的発達した経済では成長率を下げる。さらに、金融システムの質が低い経済では、バブル崩壊後に、経済成長率が低下し長期停滞に陥る一方で、質の高い経済では経済成長率がV字回復するということが明らかにされた。さらにバブルは、その規模に関係なく投機家の経済厚生を高めるものの、金融が比較的発達した経済では規模の大きなバブルが生じ、労働者の経済厚生は低下するという影響が見出された。

Interpretation(解釈、示唆)
本論文の貢献の1つは、金融システムの質を基軸にバブルの光と影の側面を明らかにした点である。さらに、バブルに対する政策対応を考えるための政策分析、定量分析等さまざまな応用に活用できる基礎理論を提示したという意味でも重要な結果を示している。

背 景

バブルの本質に迫る経済理論の構築

論文プレビュー

資産バブル、内生的成長、金融市場の摩擦

補論

補論:Hirano and Yanagawa (2017)

論文へのリンク

Tomohiro Hirano and Noriyuki Yanagawa, "Asset Bubbles, Endogenous Growth, and Financial Frictions," The Review of Economic Studies, 84: 406-443, 2017.

CREPEフロンティアレポートシリーズはCREPE編集部が論文の著者へのインタビューをもとにまとめたものです。