東京大学政策評価研究教育センター

CREPEFR-5 時間・混雑プレッシャーがかかる中で商品オススメに効果はあるのか?

著者:川口康平(香港科技大学)、上武康亮(イェール大学経営大学院)、渡辺安虎(東京大学)


画像提供:K@zuTa / PIXTA(ピクスタ)

Executive Summary

Background(問題意識)
近年の技術革新とともにビジネス現場でのデータ活用が話題となっているが、実際にデータから有益な知見を得るためには、事前の仮説とそれに基づく緻密なリサーチデザインが不可欠だ。本論文は、著者らがJR東日本ウォータービジネスと共同で行った、エキナカのデジタル自動販売機を利用した「フィールド実験」に基づく分析の成果である。駅のデジタル自販機による商品のオススメ表示が、次の電車が来るまでの時間や周囲の混雑状況の影響と相まってどのような効果を発揮するのか、そのメカニズムを明らかにした。

Methods & Data(分析方法とデータ)
首都圏を中心とした各駅に設置されたデジタル自販機が収集する販売データを用い、オススメの選択に恣意性が入らないように表示パターンを統制し、実際のオススメ表示の効果はどの程度かを分析した。加えて、周囲の状況の影響も考察するために、次の電車が来るまでの時間的なプレッシャーや、周囲の混雑状況をデータ化して分析に盛り込んだ。実験では、平日に限定して朝・昼・夜の時間帯を区分けし、各時点で統制したオススメ表示を出すか否かをランダムに定めるなど、因果関係の識別に慎重に配慮した設計を行った。

Findings(主な結果)
オススメ表示の効果を、自販機全体で見た場合と、商品ごとに見た場合とに区別し、さらに同じ自販機の中でオススメ表示をした商品自体への効果と、その他の商品への波及効果を分析した。オススメ表示は自販機全体の売上アップの効果が確かめられたものの、ダイヤが過密で消費者が急いでいる朝のラッシュアワーの時間帯では、かえって売上を引き下げてしまう効果が見られた。逆に、昼の余裕のある時間帯ではオススメ表示は売上をアップさせており、その中で周囲に人が多いほど効果が高く、表示された商品それ自体よりも、同じ自販機の他の商品への波及効果が高まることがわかった。

Interpretation(解釈、示唆)
分析結果を受けて、いつ、どのようなオススメ表示を展開することでより売上を高めることができるかについての実務面でのさまざまな示唆を提示している。また、現在行っているオススメ表示のパターンにはどの程度の収益改善の余地があるか、などについての具体的な試算も示した。本論文は、データ分析から豊かで実践的な知見を得るためには、経済学の知識に裏打ちされた仮説と緻密な実験デザインに基づき因果関係を明らかにしていくことが特に重要だということが実感できる好事例でもある。

背 景

ビッグデータを活かすにはエキスパートが描く設計図が必要

論文プレビュー

時間・混雑プレッシャーがかかる中で商品オススメに効果はあるのか?

論文へのリンク

Kohei Kawaguchi, Kosuke Uetake and Yasutora Watanabe (2018 accepted), "Effectiveness of Product Recommendations under Time and Crowd Pressures," Marketing Science, forthcoming

CREPEフロンティアレポートシリーズはCREPE編集部が論文の著者へのインタビューをもとにまとめたものです。