東京大学政策評価研究教育センター

Title 東京大学政策評価研究教育センター×東京商工リサーチ 共催セミナー
「TSR企業情報を用いた研究成果発表」
Date 2021年12月3日(金)December 3, 2021, 15:00-16:00
Venue Zoomを使ってのウェビナーとなります。
Online seminar on Zoom
Abstract 東京商工リサーチ が長年蓄積した企業情報を活用した東京大学政策評価研究教育センターによる実証分析の研究成果をご紹介します。

首藤昭信(東京大学大学院 経済学研究科 准教授)
『日本企業の利益調整-連結制度改革の影響に関する実証分析』

利益調整(earnings management)と呼ばれる会計学の研究領域の概略を説明した上で,TSR社の非上場会社データを利用した研究成果を報告する。具体的には,2000年に行われた我が国の連結制度改革により,新たに連結対象となった子会社の利益の質が向上したか否かを検証した結果を報告する。新たに連結対象となった非上場子会社は,上場市場からの強い要請により利益の質が改善することが予想される一方で,親会社の連結利益の利益調整のために子会社利益が利用されることで子会社利益の質が悪化されることも予想される。本報告では,いずれの仮説が支持されたのかを報告する。利益調整は,実務への応用可能性が高い研究領域であり,証券投資,監査,または規制当局といった様々な領域でその知見が活用されている。そのような知見の概略を説明する。

植田健一(東京大学大学院経済学研究科/公共政策大学院教授)
『上場と非上場の経済学的差異』

20年にわたるTSRのデータを用い、産業、企業規模、メインバンクなど、よく似ている上場企業と非上場企業を比較した。拡大余地があれば企業は拡大を目指すが、通常はある程度大きくなるとともに、次第に資産収益率(ROA)が下がっていく。それは、均衡ではほぼ金利と同値となるはずだが、何らかの理由で、高い金利に面しているか、または同じ金利でも融資を受けられないような場合、規模が拡大できず、その分資産収益率が高い(拡大余地がある)ということになる。すなわち、資金制約は資産収益率を見れば良い。ただし、毎年、そして企業ごとに、多少の上下があるので、上場企業と非上場企業という大きな枠で差異があるかを、よく似ている企業通しで比べその平均を見ることで確かめた。実際、非上場企業の方が、平均して、有意に資産収益率が高く、すなわち資金制約に面し、拡大余地があることを意味している。もっとも上場企業は、平均して借入金がむしろ少ないこと、また金利はほぼ同じであることも示されており、常日頃から借入がいざというときにできるように、財務経営をしているということでもある。そして、実際、資産収益率の差は、不況期に顕著に現れている。
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