東京大学政策評価研究教育センター

CREPEDP-172

Number CREPEDP-173
Publication Date September 2025
Title 統計のカバレッジ拡大によりGDPは上方改訂へ ―― ソフトウェア投資は大幅に上振れる可能性も ――
Author 西村淸彦、肥後雅博
Abstract 的確な景気判断や経済政策の迅速な決定には、GDPをはじめとする精度の高い経済統計の整備が不可欠であるが、経済のサービス化やデジタル化の進展により、その実現は容易ではない。本稿では、2024年夏公表の「2020年産業 連関表」を用いて、統計改革のもとで進む統計のカバレッジ拡大を通じた精度向上の成果を評価し、2025年末予定の国民経済計算(SNA)基準改定で見込まれるGDPの上方改訂幅の大きさやその分野別の影響度合いを試算する。試算結果では、2020年のGDPは現行公表値の540兆円から約14兆円2.6%ポイント)上方改訂される見込みである。2019年以前の上方改訂幅は不確実性が大きいが、GDP成長率も2011年から2015年を中心に上振れる可能性がある。需要項目別では上方改訂幅の 9 割(約 1 3 兆円)を民間の総固定資本形成が占め、民間設備投資の上振れが大きくなる。分野別では、ソフトウェア投資が約7兆円、リフォームを中心とする建設投資で約3兆円、不動産の分譲マージンで2兆円強と、3つの分野で上方改訂の大半を占める。このうち、ソフトウェア投資ではSNAの現公表値が低調な伸びにとどまることから、日本のIT投資は欧米諸国に見劣りするとの評価が一般的である。しかし、今回の上方改訂でソフトウェア投資が過去に遡って大きく増加する姿に変更されることから、これまでの評価が覆る可能性がある。カバレッジ拡大 を通じた GDP の 精度向上は、 GDP の水準や成長率を通じたマクロの政策評価のみならず、ソフトウェア投資など個別分野の政策評価にも大きなインパクトをもたらす点で、意義深い取り組みであると考えられる 。
Other information Paper in Japanese (21 pages)