Abstract |
本稿は、個人住民税課税記録データを用いて、有配偶女性の就労調整について
記述的分析を行う。まず、有配偶女性の年収分布上で、所得税課税対象となり
税制上の扶養から外れる103万円と、社会保険の扶養から外れる130万円に
「年収の壁」があることを確認する。2018年の配偶者控除・配偶者特別控除
の変更について、有配偶女性をトリートメントグループ、無配偶女性をコント
ロールグループとした差の差推計では、103万円以下に年収を調整する有配偶
女性の割合が減るという結果を得たが、夫の所得税率別の分析ではそれほど頑
健な結果は得られなかった。結婚や出産などのライフイベントの前後では、元
の収入が低かった女性ほど、結婚・出産をきっかけに扶養の範囲に年収を抑え
る傾向が確認された。出産後、子供が成長するにつれて女性の労働供給は増加
傾向となるが、子供が幼稚園から高校生まで年収の壁は存在している。さらに、
同一個人を5年間追跡すると、扶養の範囲で働いていた人の2/3は5年後も
扶養の範囲内にあり、結婚・出産後もフルタイム就業を続ける人と結婚出産を
機に退職し、非就業あるいは扶養の範囲のパート就業にとどまる人との二極化
が示唆される。 |