Abstract |
企業や家計の的確な物価・景気判断や金融・財政政策の迅速な決定には、物価、
賃金、国内総生産( GDP )をはじめとする、精度が高く、速報性のある経済統計
が不可欠である。現在、その重要性は、コロナ禍の影響の見極めと対処、そして
インフレ高騰の予想と適切な方策を考えるときにさらに高まっている。
「ポストコロナ時代の公的統計」に関するシリーズの第1回では
、コロナ禍に
よる経済の落ち込み、その後のインフレの高騰など、最近の日本における経済・
物価情勢の大きな変化が消費者物価指数や GDP をはじめとする経済統計にど
のような試練をもたらしているかについて整理 する 。具体的には
➀新型コロナウイルス感染症(
COVID 19 )の収束に伴う経済の回復と最近に
おける急激なインフレの加速が、経済の「不平等化」を体現しており、また賃金
統計の「バイアス」が賃金の動きの正確な把握を難しくしていること
②新型コロナウイルス感染症の広がりによる生活様式の変貌と経済の大きな
落ち込みを、四半期 別 GDP 速報( QE )が適時に的確に捉えていないこと。長
いタイムラグと大きな事後改定が、景気判断に悪影響を及ぼしていること
③経済のサービス化・デジタル化・グローバル化の一段の進展に対応する統計
のカバレッジ拡大が、いまだ不十分であり、行政記録情報、特に税務情報の活用
が喫緊の課題となっていること
を
取り上げる。
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