東京大学政策評価研究教育センター

CREPEDP-93

Number CREPEDP-93
Publication Date January 2021
Title アフターコロナ時代における 日本企業のサプライチェーンについての一考察
Author 藤本隆宏
Abstract 本論は、2020 年に勃発した、新型コロナウイルスの感染拡大を「グローバル競争時代に 勃発した見えないグローバル災害」と規定し、これに対して、製造系の企業はそのグローバル・ サプライチェーンをどのように変化させていくべきかについて緊急に論じた予備的考察である。 われわれは、あくまでも「グローバル競争化のグローバル災害」であることを強調する。したがっ て、サプライチェーンの競争力(competitiveness)と頑強性(robustness)のダイナミックなバランス が重要である。平時においては競争力重視の自然体のグローバル・ローカル・サプライチェー ンを編成する一方、災害時には頑健性重視の編成に迅速にスイッチできるように、被災地復 旧能力、代替生産能力、感染防御能力などを、平時から各拠点に蓄積しておくことである。当 該災害の猛威に圧倒されるあまり、短期視野からの過剰反応(たとえばローカル・サプライチェ ーンへの不可逆的な委縮)に走るのは禁物である。むしろ産業進化の歴史や過去の能力構 築の経路を踏まえた長期的な視点から、アフターコロナ時代に対処する柔軟なグローバル・ロ ーカル・サプライチェーンを構築すべきであると考える。また、この観点から見ると、過去 30 年 のポスト冷戦期において、グローバル大競争や震災など大災害の危機を乗り切った日本の優 良国内拠点は、そこで蓄積されてきた競争力、被災現場復旧力、代替生産力、防御力の高さ ゆえに、この新しい時代のサプライチェーンの中で、相対的な重要性は高まる可能性があると 予想する。この観点から、日本企業のアジアでのサプライチェーン、特に日本―中国―アセア ンの「三角形」のバランス修正の可能性についても、長期視点から考察を加える。
Keywords 新型コロナウイルス感染拡大、見えない災害、サプライチェーンの競争力と頑健 性、アフターコロナ時代、競争モードと災害モードのスイッチ
Other information Paper in Japanese (15 pages)
English version (CREPEDP-94)