東京大学政策評価研究教育センター


CREPEコラム「新型コロナ対策としてのマスク着用義務化――アメリカの政策評価と日本への示唆」(CREPECL-10)でとりあげたブリティッシュコロンビア大学経済学部・笠原博幸教授らの論文 "Causal impact of masks, policies, behavior on early covid-19 pandemic in the U.S."がこのたび Journal of Econometrics にアクセプトされ、オンラインで公開されました。
この論文では、米国の各州で採用された様々なポリシーがCovid-19の感染者数とそれによる死亡の増加率、およびGoogleモビリティレポートで測定された社会的距離行動に及ぼす動的な影響を評価しました。分析の結果では、感染を抑えるための政策と感染増加に伴う感染リスクの情報の両方がCovid-19の感染者数と死亡の増加率の重要な決定要因であることがわかり、政策の変更が社会的距離行動の観察された変化の大きな部分を説明していることが示されています。反事実的実験では、パンデミックの初期に従業員にフェイスマスクを全米で義務付けることで、4月下旬に症例と死亡の週ごとの増加率を10パーセントポイント以上減らし、結果として5月下旬までに19〜47パーセントも死亡を減らすことができた可能性があることを示唆しています。この結果はマスク政策がもし執行されていたら、およそ1万9千から4万7千人の命を救えたことを意味します。

【参考リンク】
"Causal impact of masks, policies, behavior on early covid-19 pandemic in the U.S."
CREPEコラム「新型コロナ対策としてのマスク着用義務化――アメリカの政策評価と日本への示唆」(CREPECL-10)